クリープハイプのグッズ制作はファンレターから!?
歌うたいのような絵描き「YUMIMPO*」

  • posted.2017/11/20
  • 馬場葵
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クリープハイプのグッズ制作はファンレターから!? 歌うたいのような絵描き「YUMIMPO*」

2001年結成、2009年から現メンバーでの本格的な活動をスタートし、いまや若者を中心に絶大な人気を誇るバンド「クリープハイプ」。そんなクリープハイプのファンであれば、もしかしたらご存じかもしれません。

浜松を拠点としていた絵描き「YUMIMPO*(以下、ゆみんぽ)」さんは、彼らのツアーグッズを2度もデザイン。鮮やかな色使いと表情豊かな女の子、幻想的ななかにも少しの生々しさが入り混じった画風が特徴的です。

じつは以前、ゆみんぽさんのお手伝いグループ「ぽ組」に属していたわたし馬場。現在は上京しているゆみんぽさんですが、9月15~18日の3日間、浜松市天竜区の蕎麦屋「百古里庵(すがりあん)」さんへ個展をしに戻られるとのことで、久しぶりに会いに行ってきました。

作品は音楽から生まれる「MV」のよう

yuminpo_01個展会場の「百古里庵」さんは明治初期の古民家。

yuminpo_02浜松市を拠点に活動していた絵描き、ゆみんぽさん。

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馬場

お久しぶりです。まさか取材で再会させていただくなんて。今日はあらためて、ゆみんぽさんの活動についてお話を伺えればと思います。
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ゆみんぽ

久しぶりだねえ、わー緊張する(笑)

yuminpo_03会場内は壁や天井、床までゆみんぽさんワールド一色。

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馬場

まずゆみんぽさんが、絵描きとしての活動をスタートされたのはいつでしょう?
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ゆみんぽ

初めて個展を開いたのは2007年かな。当時通っていた大学の文化祭にあやかって、教室のどっかで2日間。白い布とか白く染めた新聞紙を壁と床中に張り付けて、部屋の真ん中には水を流し込んで生花を浮かべてた。それで、2mくらいの絵を飾って。

yuminpo_002007年『my room ~白の寝室~』 画像提供:YUMIMPO*

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馬場

空間から凝ってますねえ。反響はいかがでしたか?
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ゆみんぽ

このときは来場者300人くらいだったよ。それから母校の文化祭には毎年展示してたけど、2009年には1,800人以上も来てくれた。ちょうど「浜松百撰」っていうフリーペーパーの表紙を描かせてもらってたときで、「個展の準備中」って取り上げてもらったこともあって。

yuminpo_04『浜松百選』の表紙になったイラスト。

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馬場

初個展で300人も相当すごいです……。ゆみんぽさんを知ったとき「歌うたいのような絵描きを目指す」って文句がかっこいいなあと思って。それっていつから考えるようになりました?
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ゆみんぽ

2013年くらいかな……どうだろう。でもね、ずっと思ってた。絵を描きたいとか個展をしたいって考えたとき、単に絵を飾るというよりは空間が先に浮かんでくるの

 

この空間があって、絵を飾って、こんな服を着て、こんな音楽を流してってところまでがセット。MVみたいなものに憧れてて、初めての個展のときから流す音楽を想定して作品をつくったしね。

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ゆみんぽ

音楽の人は曲を作って、MVを撮って、CDジャケットがあって、売り出すためのCMが流れてって一連の流れがあるじゃんね。そういう感じで絵の発表もフライヤーだったり、ファッションだったりからこだわって決めて。絵を描くだけじゃない全部のプロモーションも含め、「歌うたいみたいな絵描き」になれたらと思ってる
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馬場

なるほど。たしかにゆみんぽさん、お会いするたびに服装や髪型が全く違ってるイメージです。

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ゆみんぽ

個展には毎回テーマがあるから、この空間の中にいるには……って考えて。「緑」がテーマの個展では、美容師さんに「青虫っぽい感じにしてくれ」って頼んで緑色になった。「赤」と「虹色」がテーマだったときは、全体が赤でサイドを虹色にしてもらったりね。
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馬場

え、ウィッグは使わないんですね。
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ゆみんぽ

地毛地毛。そのとき普通にバイトしてたから、むしろバイト行くためにウィッグ被ってる感じだった。
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馬場

(笑)そういう作品づくりの仕方って、どなたかから影響を受けてるんでしょうか?
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ゆみんぽ

画家さんにはあんまり影響を受けてないんだよねえ。しいて言うならヘンリー・ダーガーとか。あと音楽だけどね、ラルクには影響受けてる。最初の個展は『HONEY』を聴きながら出来上がったし。

 

音楽を聴いてると同時に色とか風景みたいなものが浮かぶから、それを好きに描いてるだけで。昔なんて、絶対に混ぜちゃいけないだろって絵の具を混ぜて使ってたもん。なんとな~く、思うままで描いてきた(笑)

※ヘンリー・ダーガー:1892年4月12日 – 1973年4月13日、アメリカ出身の作家・アーティスト。数十年にもおよぶ年月をかけ執筆した、彼自身による挿絵付きの長編小説『非現実の王国で』で知られる。

クリープハイプグッズ制作の裏側

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馬場

ゆみんぽさんの展示会場は毎回、音楽が流れてますね。今日もクリープハイプが。ファンになってからは結構長いですか?
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ゆみんぽ

なったのは2012年くらい。当時クリープハイプの尾崎世界観がパーソナリティをしてたラジオ番組で、彼らの曲を聴いたときにあまりによくて。

 

番組内で「感想をツイートしてください」って言うんだけど、そのときわたしツイッターやってなかったの。それで自分のポストカードの裏に感想を書いてラジオ局に送ってたら、じつは尾崎さん本人に届いてたらしくて

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馬場

うお~そうだったんですか。
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ゆみんぽ

そうそう。絵ハガキだから尾崎さんはそれを取っといてくれたみたいで。ただの感想文だから自分の絵だってことは書いてなかったんだけどね。でもあるとき作品づくりで煮詰まって、すごく困ったときがあって。

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ゆみんぽ

「尾崎さんも作りたいものが作れず、悩むことはありますか」って個展のポスターの裏に書いて送ったんだけど。たぶんそのとき「こいつが描いてるんだ」って気づいたんだと思う。

 

しばらくあとに「ツアーグッズを作ってください」って連絡がきて。あっ、て思った。ずっと「歌うたいみたいな絵描き」を目指してきたけど、夢がひとつ叶ったって。

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馬場

ファンレターを送っていたつもりがお仕事につながったと。当時のグッズ制作の裏話とかって聞かせてもらえますか?
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ゆみんぽ

いろいろ反省点はあるけど、単純にやりたいほうをやらせてもらえたかな。あいだにデザイナーさんがいて「こういう路線で」って指示をいただくんだけど、でも「この曲にはこんな絵が合うだろうな」っていう、自分が描きたいものもあるじゃんね。だから言われた絵も描いたうえで、それとは別に自分がいいと思う絵も持って行ったの。
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馬場

おー、反応はどうでした?
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ゆみんぽ

最終的には尾崎さんが選んだらしいんだけど、わたしが描きたいと思ったほうに決めてくれて。それもすごく嬉しかった。

 

それと頼まれたグッズはTシャツだけだったけど、『左耳』って曲をモチーフにしたグッズもつくりたいって案を出したら「それもいいね」って増やしてくれて。※2013年クリープハイプ全国ツアー「クリープハイプの窓」ツアーグッズ《クリスティーナTシャツ》《左耳 キーホルダー》

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馬場

めちゃくちゃ柔軟ですね。
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ゆみんぽ

ね。最近もまたポーチとアイフォンケースを作らせてもらって、そのときもじつはポーチしか頼まれてなくてね。ポーチのデザイン画を物語風にして、勝手に表紙の絵もつけて持っていったら、「表紙の絵もいい」ってアイフォンケースにしてくれたんだよ。

 

クリープハイプのグッズにしてはメルヘンだったと思うんだけど、自分のやりたいように、本当に自由に描かせてもらえた※2016年クリープハイプ全国ツアー「わすれもの~つま先はその先へ~2016」ツアーグッズ《使っていると「それ自分で書いたの?」って何回も言われて「あぁー」ってなりそうなポーチ》《小川くんがおいしいiPhoneケース》

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馬場

わたしのなかのクリープハイプ株がぐんぐん上がってます。クリープハイプさんとお仕事をしたのはその2回ですか?
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ゆみんぽ

そうだね。あ、仕事場がかぶったことは1回ある。京都のボロフェスタっていうイベントの装飾をしたときに、クリープハイプがトリをやってて。挨拶に伺ったんだけど、たまたま尾崎さんがいなくてひたすらカオナシさんに喋らせてた。基本、カオナシさんに気を遣わせて流ちょうに話していただいてる(笑)
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馬場

あ、カオナシさんが一番お話なさるんですね。意外かもしれません。
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ゆみんぽ

初めて会ったとき、いろいろあって号泣しちゃって。向こうからしたら「ファンすぎて泣いてる」っていう、普通にヒク状況なの。でもみなさん嫌な顔ひとつせず、カオナシさんは近寄ってきて「そのネックレスかわいいですね」とか、ずっと気遣ってくれて。本当にあのまんま、優しい人たちだよ。
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馬場

カオナシさん株も急上昇しました。クリープハイプさんとお仕事をするようになって、音楽関係のつながりは増えました?

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ゆみんぽ

どうだろう。パスピエさんにご挨拶させてもらったときは、メンバーの顔がまだわからなかったから「ボーカルの子はこの女性で……、あとはどれがなにさんなんだ!」って(笑)あとはtricot(トリコ)ってバンドのイッキュウちゃんのことは大好きで、一緒にチーズケーキ食べに行ったり。
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馬場

かわいい……。以前には水曜日のカンパネラさんともお仕事なさってましたもんね。
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ゆみんぽ

そのときは音楽だけじゃない、バンドの中身がどうやってできているのかを勉強できたいい機会だったね。コムアイちゃんも若いのにすごくしっかりしてるし。繊細だけど、人を驚かせたい・楽しませたい精神の塊。
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馬場

なんか、ちゃっかりすごいお話を聞かせていただいてる気がします。

「有名になる」のは恩返しのため

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馬場

今後も音楽とある種コラボと言う形で、お仕事はしていきたいですか?
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ゆみんぽ

したいなあと思って、東京に出たの。いまもCDジャケットを頼んでくれてるバンドがいて。このあいだ個展に来てくれたバンドさんは、ステージ装飾のアドバイスをくださいって言ってくれたり。そういうことをもっとしたい。
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馬場

そうですよね、上京。こうして個展を開くのもコラボを続けながらですか?
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ゆみんぽ

地方での個展はね、今後は控えようとは思ってる。別の形で、もっとたくさんの人に知ってもらえる努力に時間を割こうかなと。
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馬場

わ、楽しみです。今後ゆみんぽさんの作品が目に留まる機会が増えていったとき、見る人にどんなことを感じてほしいですかね。
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ゆみんぽ

んん~、楽しくなってもらえたら。っていうのも、そう言われたから。好きなように描いて好きなように飾ってたら、来場者さんに「元気になる」って言ってもらえて。なかには仕事の合間、すこしだけ時間が空いたからって1時間かけて来て15分だけ滞在して帰っていく人もいて。むしろそれに、わたしが励まされてる。すごく嬉しい。

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馬場

すってきなファンの方。じゃあ最後に、今後の展望を教えてください。
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ゆみんぽ

有名になりたい!!!
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馬場

直球!(笑)
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ゆみんぽ

(笑)わたし、人よりもできないことが多いのね。靴下なんて穴開いたのしか持ってないし、絵を描いてるだけで本当にダメ人間なの。そのぶん人一倍がんばらなきゃと思ってて。だからこうして活動できてるのは、ぽ組(ゆみんぽさんのお手伝いグループ)の子とか個展会場のオーナーさんとか、たくさんの人にお世話になっているおかげでね。

 

みんな「いつか返してくれればいいよ」って言ってくれるんだけど、返し方って有名になるしかないじゃん返したいから有名になりたい。あとはこんな人間でも絵描きになれるんだって、気分的にも明るく元気になってくれたら嬉しい、です!(笑)

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お知り合いになって5年、一度も曇った表情を見たことがないくらいに、いつでも笑顔を絶やさないゆみんぽさん。

でも「自分はなにもできない」「そんな自分を見て元気を出して欲しい」とお話してくれたり、インタビュー中にも「こんな答えで大丈夫?」と不安げに聞いてくださったり……。

人よりできないことが多いどころか、人よりも人を見る、気遣いの方なんだと感じました。「いまはいい、いつか返してくれれば」と人の心を衝動的に動かしているのは、作品はもちろんのこと、ゆみんぽさんのお人柄もあるんじゃないでしょうか。

クリープハイプのツアーグッズで知った方も、この記事で知った方も、ぜひゆみんぽさんの作品に触れて、まるでヘッドホンで音楽を聴くようにその世界へ浸ってみてくださいね。

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